院内の衛生管理について

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右手がむくむ、手首が痛い

会社員 60代 男性
2か月前に脳出血で入院した。リハビリを開始した時期から手首が痛くなった。最近は手首から先がむくみ、指の関節が固くて手を握りこむことができない。

仕事と私事が非常に多忙な時期に脳出血から入院をされたとのこと。出血した量が少なく、命に別状はなかったが右半身に麻痺が出たので入院中からリハビリを行ったそうです。明確な契機は覚えていないけれど、おそらくそのあたりから右手首が痛くなり、最近ではむくみがでてきたとのこと。

中枢神経にダメージを負うと、一見不規則に思える症状が感覚や運動に現れることが、多くあります。その場合、施術する者として気をつけるべきは、まず回復のために疲弊している神経にさらなる負担を加えないようにすることであり、拙速に関節や筋肉に大きな刺激を与えないということだと考えています。このケースは、上肢の一部分に、関節運動の機能低下と痛みそして浮腫がみられるというものでした。局所的な問題に聞こえますが、その点に注意して検査をしました。

上肢の神経学検査は陰性、可動触診では手関節および指節間関節に屈曲伸展制限がみられました。浮腫は手首の支帯から手掌全体におよんでいました。リハビリ中に、手首を負傷した結果と考えるには時間経過の点で不自然な腫脹でした。ことの経緯から考え、神経全体に回復のための負担により、CRPS(複合性局所疼痛症候群)様の症状が右手に出ている疑いをもちました。そうすると、痛みを感じる施術はかえって逆効果となる可能性があると考えました。

よって、施術は右手および手首に対する強い施術をひかえ、まずは自律神経バランスに寄与する脊柱および肋骨に対するカイロプラクティックケアおよび手首、指への穏やかなモビリゼーションを1週間に1回のペースで行うことにしました。

骨盤ブロックとボード

骨盤ブロックやボードを利用してカイロプラクティックケアの刺激量を調節します

その後、施術4回の時点で浮腫がほぼ見られなくなったので、交感神経を抑えるようなケアと痛みには留意しながら、ボードを使った手関節、指節間関節にマニピュレーションを行っていきました。半年経過した段階で、手首および指の動きの制限はなく、左手と遜色なく握りこむことができるようになりました。現在は3週間に一度、状態の確認を目的にお身体のメンテナンスにいらしています。

入院されていた病院で相談したけれど、はかばかしい話が聞けなかったとのことで、ご不安な表情をされていました。ですので、カイロプラクターとして自分に何が出来て何が出来ないということをしっかり分別をつけた上で、お話と施術を行うことを強く思った記憶があります。

結果的に症状の大部分は改善しましたが、今回は患者様の日々のセルフケアと自己治癒能力がすべてであり、その力の発揮を邪魔しないことが、私の唯一の貢献であったように思えます。

今後は、神経の回復後にみられる反射の亢進などで、筋骨格系全体のアンバランスが起こることも予想されるので、目をひからせながらサポートを続けていきます。