院内の衛生管理について

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「通院を止める、他をさがす」という判断のポイント

胸椎への施術

完全な技術が存在していないこと、技術を適用される人間自体が複雑な存在であること、人間が技術を実施することにおいて常に完璧ではありえないこと。

この事実からは、どんなヘルスケアも逃れることができません。つまり、常にクライアントの症状を100パーセント確実に解消することは誰にもできないということです。

ただ、ひとつの症状にたいして、ある施術者が対応できなくても、別の施術者が対応できることは間違いなくあります。熟練度によるのか、技術の種類のよるのか理由はそれぞれですが事実です。症状がなかなか治らず辛い思いをされている方ほど、それをたよりに自分の苦しみに決着をつけてくれる施術者を、懸命に探します。

そんな方が来院された時「自分のもてるものをすべて提供する」ことは当然として、「お役にたてない可能性が大きい場合は速やかに告知しよう」と私は決めています。頼ってきていただいた方を早々に放りだすのかというお叱りをうけるかもしれませんが、私は以下のように考えています。

私を含め徒手療法家は適応症、つまり自分の療法が対応できる症状を定義しています。いちど適応症と判断した場合、症状に対応する施術を実施していきます。このとき、一定の症状にたいして、施術者はだいたい「三つの矢」をもちます。まず一番自信のある第一の矢からはじめ、第三の矢まで適用していきます。そして第三の矢まで適用して「なんの反応もない場合」、この症状に対して自分ができることは75%は完了していると考えます。

のこり25%は、さらに細心の注意をはらった第一から第三の矢を再適用するか、経験が少ない「知識という引き出し」からもてるものを適用していくといったもので、いずれも当初より改善の見通しが格段に低まります。それは、クライアントにとっては「効果が実感できない」上に「見通しもたたない」という、ただただ不安な状況におかれるということを意味します。

不安の中にあるクライアントの時間とお金を費やすに足るマネジメントを、残り25%の中から生みだせるかどうか。施術者としては、非常に悩ましいところです。それは、もともと「三つの矢」自体この25%から生まれ出たものが多いからです。矢が尽きた時に発揮されるものがその施術者の本当の資質であることを考えれば、そこですぐ止めるのは施術者、特に徒手療法家であればなおさら職務にもとるものと思われます。

ただし、それはあくまで施術側の話であり、クライアントの関知することではありません。その症状にすぐに対応できる施術者が他にいる可能性は十分にあるのですから。

結論としては、クライアントはまず「なにが問題でどういう施術をどれぐらいするか」聞いておきましょう、それにそった施術が一回りした段階で効果が実感できない場合、「次どうするか」聞いてみましょう。最初より歯切れが悪くなっていればおそらく「その施術者にとって未経験の領域」に入っていると考えていいでしょう。その上で次の策を聞いて、「任せてみよう」と思うか「他をさがそう」と思うかご自身の心を見極めてみてはどうでしょう。

施術者としては、難しい段階に入った時に状況を速やかに説明すること、そして「任せてみよう」と思っていただけるよう、それまでの施術の品質や次の策の信頼性を上げることに全力で取り組んでいくしかないと思います。