時節がら「免疫力」について、そしてそれを「向上」させることについて語られるのをよく目にします。思うところもあったので以下記しています。
免疫とは病から身を守ることをいい、医学でいう免疫系とは人の身体にある免疫を機能させるための系=システムをさします。主な機能は菌、微生物やウィルスなどの身体にとって有害となりうる異物(病原)の侵入を検知、無害化し次に備えることです。
と一言でいっても、絶え間なくそして多種多量にやってくる微細な生物や物質を異物として素早くもれなく検知し、対処を行うにはとても高性能なシステムが必要です。それが常に狂いなく機能しているのがヒトの身体であり、それは種が何世代にもわたって進化させ受け継いできたシステムなのです。
ヒトの免疫系は、意識や神経が機能できない極小のサイズと時間において働きます。リンパ球を筆頭に、各種細胞が化学物質でコミュニケーションをとり、さながら極小レベルのピタゴラスイッチのような機能連鎖で、病原を排除していきます。
当然ですが免疫系自体には今でも未解明の部分が多くあり、そうであるからこそシステムエラーによりおこる自己免疫系疾患、アレルギーなどは非常にやっかいな疾病といえます。
「免疫力」という言葉は、専門用語ではないので、おそらく複雑なシステムの機能をあたかも一つの尺度で代表できるかのようにイメージさせるため「力」という単語を足したものだと思います。「人間力」や「老人力」のように特に具体的な意味はないと思います。
「免疫力の向上」は、免疫系の機能自体を向上させるか、その機能の発揮を十分におこなえるようにする、のどちらかだと思いますが、先に述べたとおり免疫系は、人体の恒常性を保つため何世代にわたって種が培った堅牢なシステムですので直接的に機能を拡張したり、向上することは容易にできません。ですので間接的に機能が十分発揮されるような環境を整える、ということが意識的にできる「免疫力の向上」にあたるのではないかと思います。
人一人の体内環境を整えるということは、ピンポイントで「これが効く」という形式ではありえませんので、結論としてはごく常識的にバランスのとれた食事とストレスの少ない生活をすごすということになります。(参考: 世界カイロプラクティック連合 「COVID-19 流行下の成人に対する栄養摂取アドバイス」)
面白みのない結論かもしれませんが逆に、それだけで良いほど人の免疫システムはうまくくみ上げられているといえるでしょう。ひるがえって「免疫力向上」の効果てきめんをうたう広告を安易に信じないことが時節がら大切だと思われます。
ちなみカイロプラクティックによる背骨の調整で、免疫力が高くなることはありません。また新型コロナウイルスの予防や回復に役立つという言説にはなんら科学的根拠はありませんし、法律にも抵触しますのでご注意ください。(参考: 日本カイロプラクターズ協会 「WHO 基準のカイロプラクティック業界から 新型コロナウイルス感染症の広告・宣伝についての注意喚起」)
ストレスにならない程度に仕事や運動で疲れ、バランスのとれた食事をとり、ぐっすり眠ることは、幸せであり健康を保つものでもあるんですね。