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5年ほど続く不眠と20年来の腰の痛み

専業主婦 50代
数年前から眠りが浅く疲れが取れない。ここ数カ月は眠りが浅くちょっとした物音で目を覚ます。腰は20年来痛みがあり、疲労やストレスがたまると痛みが強い。腰を曲げていると少し楽になる。

以前から眠りが浅い様子を娘さんが心配してお連れいただいたという経緯です。症状は年来のものなので良くない意味で心と身体が「慣れて」いる可能性も考えられました。お連れいただいたという点も考慮して、ご本人と施術の意味や目的など意識をあわせていけるよう、お身体の状態お伝えしながら検査と施術をする方針をもちました。

検査すると、大きな姿勢のくずれはないものの、右腰部起立筋を中心に脊柱起立筋が全体的に緊張がみられました。上部僧帽筋も緊張傾向にあり両肩を引き上げていました。頸椎は右にかたむき、関節は全体的に可動性は亢進しておりますが7番に右回旋制限がみられました。腰椎は伸展制限と伸展時痛がみられました。

症状の経過からみて、腰椎の伸展時痛から関節の可動性が低下し、腰から中部胸椎まで多くの起立筋が過度に緊張しておりました。立位、臥位にかかわらず状態が変わらないため、現状が長期にわたって継続しているものと考えられました。

自律神経はその状態によって骨格筋をふくめた身体の各部の状態を決定しますが、同時に身体の各部の状態も自律神経の状態を決めるという、双方向の関係にもあります。泣いているから悲しいのか、悲しいから泣いているのか厳密には区別できないように起立筋の緊張と交感神経の興奮は相互の要因として起こりえます。今回は背部の筋の過緊張が交感神経の興奮を強めることで、副交感神経の高まりによる睡眠の深化を妨げていると考えました。

自律神経反射

佐藤優子他 (2013). 生理学 医歯薬出版株式会社より

施術は腰部の可動性を向上するため、主に仙腸関節を含む頸椎、腰椎の調整を週1回のペースで行いました。4週目に腰の痛みが意識にのぼる頻度が大幅に低減し、5週目に入眠がスムーズになったとのことです。その後状態が定着したため、現在は再発予防と経過観察のため月1度のメンテナンスケアを行っています。

「不眠を治せますか」という問いに答えることは、個人的に非常に難しいと感じております。不眠には非常に多くの要素が関係しているので、カイロプラクティックでそのすべてを効率よく改善することはできません。ただ今回のように不眠と強い関係が推測される筋骨格系の問題がみつかった場合は、比較的効果がでやすい症状ともいえます。

首肩、背中、腰の問題とあわせて、睡眠に問題をかかえているという方がおられましたら、一度ご相談いただければと思います。

最後に本ケースを以下にまとめます。

症状: 入眠しづらく眠りも浅い
直接原因: 起立筋、僧帽筋の過緊張に伴う交感神経の亢進
根本原因: 腰椎の伸展制限
施術: 仙腸関節を含む脊柱に対するマニピュレーション