出産後、家事育児をはじめて間もなく、手を握ると手首や親指のあたりの関節が痛いので物が持てなくなった。最近は、包丁をもつのも辛く、腕、肩まで痛くて家事がままならない。
この方は、帝王切開での初産、そして母乳育児をされておりました。出産の負担から身体が回復しきらないうちにはじめての育児が始まり、身体的に負担が耐えられない程度にまできていると推測しました。手をにぎる時の痛みをできるだけ早く解消することと、負担が一か所に集中するような動作を改善することを念頭におきました。
検査してみると、症状は物など持つなど、右手を握るときに親指を動かす腱に過度な負担がかかって痛くなる、いわゆる「腱鞘炎」が疑われるものでした。ただ親指の腱だけでなく、手から腕にかけて屈曲する( 肘を曲げる、手首をまげる、手をにぎる)動作に関連する筋肉(上の図の右側の肘から指先に向かう筋肉群)すべてに緊張が強くでており、その中で最も弱い親指周辺の筋腱に早く症状が出たため、手が握れず、物を持てないと訴えられていたのではないかと考えられます。また帝王切開のため腹筋が大きく弱化しており、体幹をささえる力の低下もみられました。
身体が安定していない中で、はじめてのお子様をだっこして運んだり、授乳するなど、長時間の慣れない作業が、手や腕の筋肉だけに大きな負担をかけていると判断しました。
施術は、大胸筋、三角筋、上腕二頭筋、三頭筋、前腕屈筋群の全般的な筋肉ケアにくわえて、痛みを出している腱の周辺組織をリリース、また体幹の保持力を向上するために、腹横筋や殿筋を意識したエクササイズとして、ヒップリフトをお教えしました。当初、施術後は良くなるものの翌日には元に戻るということを繰り返しましたが、施術4回を越えたあたりから、症状が軽減した状態が持続するようになりました。体幹も安定し、手を握って物を持つことが辛いという状態はなくなりました。その後、来院頻度を下げつつ、首や肩もふくめ育児によって負担がかかる場所のケアとエクササイズ指導を継続しました。
出産は人生最大の大仕事です。それを乗り切ったお母さんの身体をケアすることは、育児をする上でとても大切なことです。そのことを周りも、お母さん自身も自覚してください。お母さんの笑顔がお子さんの笑顔につながると私は考えますので、短い時間でもよいのでご自身の身体をケアしてあげる時間を必ずとってください。
本ケースを以下にまとめます。
直接原因 : 右手首の腱鞘炎
施術: 腱鞘のリリースおよび胸筋群、三角筋等の腕筋のケア
根本原因: 出産時の負担による腹筋群の弱化